発達性協調運動障害とは・・・
『発達性協調運動障害』
という言葉を聞いたことがありますか?
発達障害の一つであり、文字の通り協調運動に特性を持つことが特徴です。
昔からの言葉で言うと、いわゆる「運動音痴」「不器用」などの状態です。
ただ、発達性協調運動障害と診断されるケースは、日常生活や社会生活において問題をきたす場合です(年齢相応にできない)。
例えば、ボタンができない、靴紐が結べない、縄跳びが飛べない、箸が使えない、ボール投げができない、などなどです。
この協調運動は大きく2つに分けることができます。
一つは粗大運動、もう一つは巧緻運動です。
粗大運動とは、ジャンプやスッキップ、ボール遊び、跳び箱、などです。
巧緻運動とは、文字を書く、ハサミで紙を切る、折り紙を折る、などです。
子供によって苦手な部分は様々で、粗大運動と巧緻運動の両方苦手な子もいれば、どちらか一方だけ苦手な子もいます。
この協調運動は大人になっても残存しますが、子供に比べると大きく問題とはなりにくいです。
と言うのも、上記に挙げた、スキップやボール遊びなどは大人になってする機会は少なく、仕事や日常生活には大きな問題とはなりにくいからです。加えて、文字を書くなどの動作も成長に合わせてある程度は上達しますし、現代社会においてはパソコンなど文字入力が主流です。
それに比べ、子供においてはこの協調運動の苦手さは大きな問題となることが多いです。
なぜなら、ボール投げや縄跳びは園生活や学校生活において非常に機会の多い活動であり、さらに運動はできるできないがはっきりと分かりやすいからです。
できないと友達にバカにされたり、先生に注意されたりすることで自信を失ったり、人間関係に大きな影響を及ぼします。
にも関わらず、この『発達性協調運動障害』は他の発達障害に比べ、保護者からの困り感は少なく、単独で診断を受けることは多くありません。
最後にお伝えしたいのは、協調運動の苦手さを持つ子供たちに対して、「ただの運動音痴だ」「真面目にしなさい」「練習量が足りてないだけだ」などの解釈や対応は好ましいとは言えません。
本人は一生懸命に取り組んでいるにも関わらず、思ったように体が動かせず、苦しんでいるのですから。。。
本人の気持ちに寄り添ってあげることがまず第一で、作業療法士や理学療法士などの専門家に相談してください。
今回はこれで終わります。次回以降でもう少し詳しくお話しできればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
感覚の凸凹とは・・・
発達障害の子供には、感覚の凸凹があることが多いです。
特に、ASD(自閉スペクトラム症)児では診断基準にもなっているほど頻度の多い特性の1つです。
では、感覚の凸凹とはなんなのでしょうか??
感覚(感じ方)は、人それぞれであり誰しもが同じではないです。
簡単にいうと、ある感覚刺激(例えば大きな音や揺れなど)に対する感じ方は人それぞれ異なっており、感じ方には幅があります。
ある人は平気な音でも他の人は耐え難いぐらい不快に感じたり、同じ乗り物でも酔う人と酔わない人がいます。
このような感覚の違いにより、潔癖症の人や車酔いしやすい人、絶叫アトラクションが好きな人・・・などなどまるで性格のようなことの中にも感覚の影響はあります。
ですので、人によって感覚の違いがあることは当たり前のことです。
しかし、発達障害児の持つ感覚の凸凹とは、生活する上で著しく困難さをきたすことが多いです。
例えば、掃除機の音が耐えられず癇癪を起こしたり、少しでも人の手が自分に当たると怒り出したり、危険な高い所によじ登るなど本当に様々あります(同じような行動でも感覚以外が原因であることもあります)。
今回、細かく原因や対応をお話しませんが、一つだけ大切なことをお話ししておきます。
感覚の凸凹は決して子供のワガママでもなけれが子育ての仕方が原因ではありません。
生まれつきの脳の働きが原因です。
ですので、子供を頭ごなしに注意したり、強要したり、止めるようなことは望ましい対応とは言えません。もちろん、生命の危険や怪我のリスクがある場合は別です。
まずは、子供の気持ちを受け止めて共感してあげることで、子供たちは少しずつ安心や納得することができていきます。
そして、感覚の感じ取り方は感情や人との関係性にも大きな影響を受けます。
私たちもそうだと思いますが、嫌なことがあってイライラしている時は敏感になるでしょうし、同じ関わりでも好きな人と嫌いな人では受け取り方は違うと思います。
ですので、子供の感情の変化にも気をつけながら、子供たちとのより良い関係づくりをすることが大切です。
では、今回はここまでにします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スモールステップとプロンプト・・・
今回は、成功体験に大切なスモールステップとプロンプトについてお話ししたいと思います。
スモールステップとは、文字通り『小さな段差』です。
つまり、細かく段階づけを行うということです。
いきなり難しい課題から取り組んだり、急にレベルを上げるのではなくて、簡単な課題から少しずつレベルを上げていくのです。
プロンプトとは、子供から期待する言動を引き出すための補助(手助け)のことを言います。ABA(応用行動分析学)などでよく使われる用語でもあります。
例えば、直接子供の体に触れて動作を誘導したり、言葉の一部を伝えて発語を引き出すような支援のことです。
具体例で説明したいと思います。
例えば、『縄跳びで前跳びができるようになる』ことを目標にするとします。
もちろん状況次第ですが、いきなり縄跳びを持たせて反復練習させてもなかなか上達は難しいです。
そのため、まず私たち作業療法士はその子がどこでつまづいているかを分析します。
ジャンプの問題なのか、縄回しの問題なのか、リズム感の問題なのか、、、、などなど。
ここでは、例えばジャンプの問題が大きいと感じた場合の練習を考えて見ます。
まず縄は持たずに、
①その場で連続ジャンプをする練習
②できるだけ楽に(必要最低限の高さや力で)一定のリズムでジャンプする練習
③ジャンプと交互に両手を叩く練習
④ジャンプと一緒に、縄を回すように両手首を回す練習
・・・・
というようにできるだけ細かく段階づけを行います。
これがスモールステップです。
これにプロンプトを加えるとすると例えばこうです。
①その場で連続ジャンプをする練習
→ジャンプをする位置にテープを貼る
②できるだけ楽に(必要最低限の高さや力で)一定のリズムでジャンプする練習
→飛ぶ高さを具体的に教える、ジャンプするタイミングで体に触れる
③ジャンプと交互に両手を叩く練習
→手拍子で両手を叩くタイミングをとる
④ジャンプと一緒に、縄を回すように両手首を回す練習
→端を丸く結んだタオルを持たせる
・・・
これはあくまで一例ですが、このように子供の運動を引き出すプロンプトを行います。
(※当然、ケースバイケースですのでこれが正解や万能ではありません。)
以上のように、「ここまでするのか・・!?」というぐらい細かなスモールステップや、きめ細やかなプロンプトを訓練の中では行っていきます。
そして、子供の成功体験を丁寧に積み上げていくのです。
今回はここまでにします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
成功体験は最高の栄養になりうる・・・
前回、運動には成功体験が大切だとお話しました。
成功体験が大切なのは、運動だけではありませんが、子供(特に幼児期)では運動の成功体験は極めて大切になります。
というのも、子供の頃の運動はただ「体の使い方が上手くなる」だけではなく、理解面の成長にも大きく影響するからです。さらに、運動は成功と失敗が分かりやすいという側面もあるため、子供自身が成功を感じやすいです(失敗も同様ですが・・・)。
赤ちゃんの頃をイメージすると分かりやすいかと思います。
初めは寝ているだけですが、徐々に首を動かし、寝返りをすることで周囲の世界を目で認識します。そして、寝返りをし、物に手を伸ばし握ったり、振ったり投げたりして遊びます。
さらに、ハイハイや歩き出すことで自分の世界を広げ、いろんなことを学んでいくのです。
では、どのように成功体験を子供にさせていくのか?ということになります。
簡単にいうと、上手に大人が黒子になり、子供本人の『できた!』を増やしていくのです。
そのためには、スモールステップとプロンプトが重要になります。
今回は細かな説明は割愛しますが、スモールステップとは小さく段階づけを行うことで、プロンプトとは適切な補助のことを指します。
つまり、今の子供の力に合わせてまずは簡単なレベルから開始し、細かく段階づけを行いながら成功を重ねていくのです。そして、その際に大人が上手く補助をしながら子供自身があたかもできたかのように仕向けていくのです(まあ、実際にできているのですが・・)。
しかし、これが本当に難しいです。
ですので、これを保護者にいきなり求めることはしません。
まず、専門家である私たちがしっかりと見極めながら成功したことのエッセンスを保護者にお伝えし、できるだけ普段の生活で成功体験を子供に感じてもらうのです。
それでは、今回はここまでにします。
次回は、スモールステップとプロンプトを掘り下げていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
発達障害児への作業療法の実際・・・
今回は、実際に作業療法士として私がどんな支援を行ってきたのかを少しお話しできればと思います。
私が直接、発達障害児の子供たちの支援を行ったのは約7年です。
病院の訓練室で外来での直接訓練を中心に、少人数の運動教室のフォロー、療育施設での個別訓練を主に行っていました。
その中でも、個別訓練に関して少し説明します。
個室や少し広めの部屋で、子供と1対1にて訓練を行い、必要に応じて同伴の保護者は同席や分離を行います(ほとんどは同席です)。
頻度は多くて週1回程度で、月に2回の子もいます。作業療法だけではなく、言語聴覚療法や理学療法を併用している子もいます。1回は約40分間です。
このように限られた時間ですので、いかに効率的に必要な訓練を行うかが大切になります。
訓練内容は、保護者の希望を基にしながら、私自身が子供の状態を見て決めていきます。
例えば、運動や道具操作、生活動作など多岐にわたります。
ちょっと説明ばかりで長くなってきたので、今回は運動の訓練に関して少しお話しして終わりにします。
運動の訓練は色々ありますが、共通しているのは楽しく行うことです。
発達障害の子供は、運動に苦手意識を持っていることが多く、運動が嫌いになっている子もいます。
そのため、まずはその子が楽しめるような工夫が必要となります。これが大切なのですが非常に難しいです。
私が大切にしているのは、とにかく成功体験を子供に感じてもらうことです。
やっぱり、誰でも失敗よりも成功すると気分が良くなりますよね?
成功体験を感じるためには、その子にとってちょうどいい運動の選択や環境調整、支援方法が重要であり、それを分析し提供できるのが作業療法の専門性です。
少し長くなってしまいました。
今回はここまでにします。
次回は、どう成功体験を感じてもらうかをお話ししたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
作業療法士の正体とは・・・
私たち作業療法士の正体とは・・・
というのは大袈裟ですが、作業療法士とは一体どんな仕事なのでしょうか?
これは、よく質問を受けます。
正直、答えにくい質問でもあります。
ただ、私が思うには、
『生活支援の専門家』です。
これは私独自の意見ではなく、他の作業療法士がおしゃっていて、すごい納得しました。
生活支援のために、様々な視点を持ち、あらゆる手段を使って支援を行います。
ですので、運動や手作業、感覚統合などは手段でしかありません。
その人らしい生活を送れるように支援することが目的です。
そのために、活動や動作や作業を分析することが得意分野であり、専門性なのです。
そういうと曖昧で説明になっていないようですが、他にそんな専門家がいるでしょうか?
その目的は同じですが、作業療法にはいくつかの分野があります。
大まかにいうと、身体障害領域・精神障害領域・発達障害領域・老年期障害領域です。
その中で、私が専門としているのが発達障害領域です。
それでは、今回はこれで終わります。
読んでいただきありがとうございました。
発達障害児を支援する作業療法士のひとりごと・・・
どうも初めまして、作業療法士の『pirori』です。
私は、作業療法士になり11年目になります。
病院での勤務を経て、現在は児童発達支援の施設で働いています。
これまでの自分の作業療法士としての経験や知識などを『ひとりごと』のようにつぶやいていきたいと思ってます。
少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。
暇つぶし程度に読んでみてください。
今回は、初回なので自分が発達障害児を支援するにあたって大切にしていることを1つだけお伝えできればと思います。
『発達障害の子は、困った子ではなく、困っている子』
という考え方です。
これは自分の元上司の方に教えていただきました。
発達障害の子供は周囲の人から見ると、"困った子"と思われがちですが、そうではなくその子供自身が”困っている子”なのです。
似ているようで全く違います。
主体はあくまでも子供であり、周囲の人ではありません。
このことは非常に重要である反面、私を含め周囲の人は忘れてしまいがちな考えです。
とは言え、”困った子”である要因もゼロではありません。
なぜなら、人は一人で生きているわけではありません。
すなわち、”困っている子”の周囲の人、特に普段関わることの多い保護者にとっては”困った子”である側面はあるかと思います。
そのため、”困っている子”という子供主体の考えを原則として頭に入れた上で、”困った子”と認識している周囲の人も支援の対象となります。
私の支援の対象は、子供は当然ですが、その子の周囲の人もそうなのです。
今回は、これぐらいにします。
読んでいただきありがとうございました。